虫歯が痛い=手遅れ?そのサインと対処法
歯がズキズキと痛み出したとき、多くの方は「もう手遅れなのではないか」と不安に駆られます。虫歯は初期段階では痛みがなく、ある程度進行してから症状が現れるため、「痛みがある=かなり悪化している」と考えてしまうのです。しかし、実際には痛みが出ていても適切な治療を行えば歯を残せるケースは少なくありません。重要なのは、痛みのサインを放置せず、早めに受診することです。
虫歯の痛みが出るのはどの段階?
虫歯は進行度によって段階が分類されます。ごく初期の「C0」や「C1」と呼ばれる段階では歯の表面が少し白く濁ったり、黒い点が見えることはあっても痛みはほとんどありません。冷たいものや甘いものにしみるといった感覚が出始めるのは「C2」の段階で、歯のエナメル質を超えて象牙質まで虫歯が進行したときです。さらに進んで神経に達すると「C3」となり、何もしていなくてもズキズキと強い痛みが走るようになります。夜眠れないほどの痛みが出るのもこの段階です。
つまり、痛みを感じ始めた時点で虫歯はすでに進行していることは確かですが、その時点で歯を残すことが不可能というわけではありません。C2やC3の段階で治療を行えば、多くの場合歯を保存できるのです。
手遅れとされる虫歯の状態とは
「手遅れ」という言葉は多くの方が抱く不安ですが、歯科の現場では「治療不可能」という意味ではなく、「保存が難しく、治療が大掛かりになる」というニュアンスで使われます。歯の大部分が崩壊してしまったC4の段階では、抜歯を選択せざるを得ないこともあります。また、神経が壊死して痛みが一時的に治まった場合でも、歯の内部で感染が進行しているため、放置すれば歯ぐきの腫れや膿、さらには全身への影響につながることもあります。
痛みがあるからといって即「手遅れ」とは限らず、多くのケースでは適切な治療で歯を残せます。ただし、放置期間が長ければ長いほど治療の選択肢は限られ、歯を失うリスクが高くなるのです。
虫歯を放置することによるリスク
痛みを感じても「忙しいから」「恥ずかしいから」と受診を先延ばしにしてしまう人は少なくありません。しかし虫歯は自然に治ることはなく、確実に進行していきます。放置すると歯の組織が失われるだけでなく、噛み合わせの悪化や隣接する歯への二次感染にもつながります。
また、進行した虫歯は強い口臭の原因となり、人前で話すことに自信を失ってしまう方も多いです。さらに怖いのは全身への影響で、虫歯菌や炎症が血液を通じて体内に広がると、心臓疾患や糖尿病の悪化などのリスクが高まることがわかっています。つまり、単なる「歯の問題」では済まなくなる可能性があるのです。
歯科医院で行われる治療
痛みを伴う虫歯に対して歯科医院では進行度に応じた治療が行われます。まだ象牙質に達した程度であれば、虫歯の部分を削って詰め物をすることで対応できます。神経にまで到達している場合には、根管治療と呼ばれる神経を取り除く処置が必要になります。この治療では歯の内部をきれいに清掃し、薬剤で殺菌した上で密閉することで再感染を防ぎます。その後はクラウン(被せ物)を装着して歯を補強します。
一方、歯が大きく崩壊してしまった場合には、残念ながら抜歯が必要になることもあります。しかしその場合も、インプラントやブリッジ、入れ歯などの補綴治療によって噛む機能を回復させることは可能です。
早めに受診するメリット
痛みを感じたらすぐに歯科医院を受診することで、多くのメリットがあります。治療が比較的軽く済むだけでなく、費用も抑えられ、通院回数も少なくて済みます。初期段階であれば削る量も最小限で、審美的にも自然な仕上がりが可能です。逆に「手遅れ」と感じて受診をためらうほどに治療は複雑化し、負担は大きくなります。
痛みを感じたらすぐに受診しましょう
まとめ

虫歯の痛みは「進行しているサイン」であることは間違いありません。しかし、それは必ずしも「もう治せない」という意味ではなく、早めに適切な治療を受けることで歯を保存できるケースは多くあります。痛みを放置することこそが本当の手遅れにつながります。したがって、痛みを感じたらすぐに歯科医院を受診することが何よりも重要です。
記事監修 日吉ストーク歯科院長 中川翔太


